ぬか漬け

 ぬか漬けはおいしい。そう思っている人は多いはずのに、NHKのためしてガッテンによると、鰹節削り器とお節料理と共に、ぬか漬けは今「絶滅に瀕している」ということでした。高齢の両親と同居している方にとっては当然のことでも、核家族が多い今の日本には珍しいもののようです。
 ということで、我が家では欠かすことができないぬか漬けを、ぜひとも作ってもらおうと、予定になかったぬか漬けの作り方を、家内に聞いてレシピ化することにしました。なすびの紫色の美しい色つやがだせれば、ぬか漬けのとりこでしょう。でも、あの手の匂いは、どうにかならないのでしょうか

ぬか床を作るための基本的な材料
 ぬか1Kg
 塩(いろんなミネラルを含んでいる粗塩が良いようです)200g~250g
 初めての時には熱湯(追加時にはできるだけカルキを抜いた湯冷まし1リットル~1.5リットル
 捨て漬け用の野菜クズ適宜

用意しておきたい器具
 ぬか床の容器 (タッパーも可) 
Let’s start!
作り方
 

【ぬか床の準備】
 ぬか床の材料を混ぜ合わせ、耳たぶくらいのやわらかさになるまで熱湯をそそぎ込みます。やけどに注意しましょう。ぬかが冷めたら、いらない野菜のへたなどを漬け込み、翌日取り出します。これを捨て漬けといい、5回以上行います。
 この後、ぬか漬けができるようになりますが、ぬか床が「塩漬け」の味を脱するまでには1ヶ月以上かかります。


【塩もみ】
 野菜は漬け込む前によく水洗いした後、水気を十分にきってから塩もみをします(写真はまな板と手のひらでキュウリを塩ズリしているところです)。なすはへたを付けたまま漬け込みます。もし、容器が小さいようであれば、キュウリは2つに折ったり、なすびや人参は縦長に切って漬けても構いません。


【漬け込み】
 ぬか漬けに埋め込んだ後、表面を平らにならします。大体、夏では4時間後くらいから食べ頃になりますが、ひね漬けもまた格別です。


【取り出し】
 野菜をぬか床から取り出すときにぬかをしごき落とすと、ぬか床が水っぽくなってしまいます。野菜に付着しているぬかは、ぬか床ではしごき落とさず、流し台で軽く水で洗い落とします。適当な厚みに切ればぬか漬けのできあがりです。


【ぬか床の手入れ】
 野菜からでた水分でぬか床がべちゃついてきたら、部分的にへこませて、へこみにたまった水をふきんで吸い上げましょう。また、しばらくぬかを混ぜ込まないでいると白い膜ができて、味が悪くなることがあります。ぬか床はできるだけ毎日、容器の底から混ぜ込み、容器のまわりについた汚れは拭き取るようにしましょう。
 ぬかは野菜に付着して取り出される分だけ減っていくので、補充が必要です。ぬか100gに対して、塩20gを目安にして補充し、ぬか床の乳酸菌や酵母菌が元気に活動できるようにしましょう。


【食べる】
 ぬか漬けは、なすのきれいなむらさき色があせていかないよう、ぬか床から出したらすぐに食卓に並べましょう。ぬか漬けには土用の牛に食べるうなぎに含まれているビタミンB1も多く含み、酸味とあいまって夏の食卓には欠かせません。 

ここでの「こつ」

【早く熟成させる】 生のぬかからはじめようとすると、だいたい3~4ヶ月経たないと乳酸菌や酵母が熟成した状態にはなりません。(乳酸菌数が1グラム当たり1千万個) そこでできれば、次のような方法で、即席ぬか床を仕込むといいでしょう

1.
 ぬか漬けしている知人に100g程度のぬか床を分けてもらいましょう。この場合、数日でちゃんとしたぬか床をつくることができます。我が家では、実家に床わけしてもらっていましたが、何度か失敗を繰り返したことと、当時はぬか床の復活の仕方がわからず、その度に新しいぬか床を作り直していたため、野菜を売りに来てくれている農家のおばさんから床分けしてもらったこともありました。(もちろん床わけしてもらう量は多いほど良いですが、100gでも十分に効果があります)

2.
 市販のぬか床パックを使います。市販品を使うことに抵抗を感じる方もおられるかもしれませんが、何も市販品を使うこと自体が悪いことではないのです。ぬか床に必要なのは乳酸菌ですので、乳酸菌がたくさん含まれている市販品を使って、我が家の乳酸菌に仕立てていくのは賢い選択です。この場合、熟成までの期間を1ヶ月ほど短縮できるとのことです。

3.
 乳酸菌を含んでいるヨーグルトを大さじ1だけ加えます。この方法はひとつのウラ技かもしれませんが、乳酸菌にもいろいろあります。牛乳成分を分解する乳酸菌がヨーグルトを作れるからと言って、この乳酸菌がそのまま、ぬか漬けにも適しているかという問題とは別問題です。おすすめできる優先順位としては下位になります。
などの方法があります。 また、低温になる冬はぬか床にいる乳酸菌や酵母菌の活動が活発になれないため、熟成したぬか床でも塩辛い漬け物になりがちです。そのぬか床が新しく菌の数が少ない場合はなおさらのこと、ぬか漬けにはうまみがでません。安易にぬか床に調味料を添加して味付けするようなことはせず、ぬか床を毎日かき混ぜながら徐々に菌数が増えるのを待ちましょう。

【塩もみする】 なすを取り出すときに、ぬか床になすの色がはげ落ちてしまうようなら、塩もみ不足です。塩もみをして、そのまま塩を洗い流さずに漬け込みましょう。単にひとつまみ分の塩を野菜に擦り込むだけです。塩もみには3つの理由があります。 1. 1つめは、つけあがるまでの時間を短くすることです。 2. 2つめは、漬け物を引き上げることで減少する、ぬか床の塩分を補充することです。 3. そして3つめは、漬け物の色合いを鮮やかにすることです。なすに限らず野菜を色つや良く漬け込みたかったら、この塩もみをきちんとしましょう。鮮やかな色に漬けあがります。 漬け物をたくさん漬け込む夏場には、この塩もみの塩分だけでは不足しがちです。容器の容量にもよりますが、漬け物を毎日漬ける夏場には、漬ける漬け物の量にもよりますが毎日小さじ2杯前後の塩を追加するようにすると良いようです。

【ひね漬けの食べ方】 ひね漬けができたら、軽く水洗いしてぬかを流してから薄切りにして、酸味をとるために再びさっと水洗いして(好みでしなくても構いません)かるく握って絞り、ショウガをすりおろしたものと鰹節をふりかけて醤油をたらしてみましょう。とってもいけますよ。

【白い膜】 カビのような白い膜がはったら、それは産膜酵母です。くさい匂いは、この産膜酵母が生み出す酢酸エチルです。白い膜の部分とその周囲を取り除き、底から混ぜ込んで1度捨て漬けすれば、またぬか床を使うことができます。産膜酵母は好気性細菌ですので、空気に触れるところで活発に活動します。そこでぬか床を底から混ぜ込んでしまうことで、酸素の少ない環境に追いやって滅菌します。これで嫌な匂いも抑えることができます。もし、毎日混ぜ続けているのに、この白い膜ができるようだったら、ぬか床の塩分が不足していることが考えられます。ぬか床に塩分を補給しましょう。

【長期間保存したい】 長期間保存するには、ぬかの水分をできるだけとってから、表面にぬか床が見えなくなるまで塩を振りかけます。これで産膜酵母の繁殖力は低下します。再度使うときには、表面から2~3cm厚の部分を取り除き、ぬか床を底から混ぜ合わせ、1度捨て漬けすればまた使えるようになります。冷蔵庫や冷凍庫などに入れて温度を下げたり、鷹の爪を入れたり、からしを加える、というのも1つの方法です。これらの対策を施しておけば、次に再開するときにも気持ちよく利用できます。

【なすの漬け方】 なすは水洗いし、皮をやわらかくするために、小さじ1弱の塩をなすりつけてから漬け込みます。ぬかに漬けている間はなすは動かさないようにします。動かしてしまうとなすのきれいな紫色がぬかに落ちてしまい、茶色いなすになってしまいます。もし漬けあがったなすの身が硬いようであれば、漬けあがってから、流し台でなすをクィックィッと少しもんでやると、おいしくなります。(P.S.秋なすは真夏のなすに比べて、皮も身も少ししまって、比較的歯ごたえが増すようです)
 ちなみに、ミョウバンを入れるということもよく聞きます。ミョウバンを入れると、なすの色落ちが防げるためです。ただしミョウバンの化学式は、AlK(SO4)2・12H2O であり、当サイトでは食品に添加物を入れることは極力さけていることと、アルツハイマーが疑われているアルミニウムの摂取は絶対さけたいことから、ミョウバンを入れることはお勧めしていません。 なお、草木染めでもミョウバンを使います。これは、ミョウバンに含まれるアルミニウムイオンで、染めたい色素を固定するためです。ぬか漬けのなかでもこれと同じ事が起こっているはずで、なすの色素のアントシアン系のナスニンをアルミニウムイオンで固定していることから、なすの色落ちがなくなるとのことです。

【器の底から混ぜ込み】 ぬか漬けの発酵で大切なはたらきをするのは乳酸菌です。乳酸菌は、条件的嫌気性細菌であり、酸素があってもなくても大丈夫な細菌です。乳酸菌が乳酸発酵をはじめると、pH2.0くらいの強酸性となるので、他の雑菌を滅菌することができます。このように酸性にすることと、滅菌できることが乳酸菌の特徴です。ぬか漬けをしているとよくぬか床が異臭を放つようになることがありますが、これは産膜酵母菌の増殖によるものです。 この産膜酵母は好気性細菌であり、ぬか床の表面など酸素が十分にある環境を好みます。このため、ぬか床をかき混ぜていなかったり、乳酸菌に元気がなくなってくると繁殖をはじめます。そこでぬか漬けでは産膜酵母が増殖することを抑制するために器の底から混ぜ込み、酸素濃度の低いぬか床に混ぜ込んでしまうわけです。 一方、乳酸菌は、ぬか床を混ぜ込んだときに混入する程度のわずかな酸素量を好むため、ぬか床を混ぜ込むことで活動が活発になります。水分が多くなりすぎてべちゃついてくると、乳酸菌が好む酸素量よりも不足するため、乳酸菌が活発ではなくなるため、産膜酵母が繁殖しはじめ、まずいぬか漬けになってしまうので注意が必要です。 また乳酸菌の働きとして、乳酸やアルコール、アミノ酸などを生成し、漬け物にうまみをもたせることができます。 
 
【塩辛い】 塩の味が強いのは、塩分濃度が高いからだけではなく、うまみ成分が少ないからです。一般的にうま味成分のグルタミン酸は、塩の味覚に対して抑制効果(塩味を感じにくくする効果)がありますが、このグルタミン酸が少ないと塩味を強く感じるようになり、塩っ辛くなります。ですから塩辛い場合には塩分を減らすのもひとつの手ではありますが、塩分を減らすと雑菌が繁殖してしまう恐れがでてしまうため、このグルタミン酸による塩味の抑制効果を期待して、うまみを増やす努力をしましょう。
 
【うまみの増やし方】 うまみを増やす唯一の方法は、ぬか床で主導的な働きをしている乳酸菌の活動を活発にしてやることです。乳酸菌が繁殖できる条件を箇条書きにすると、 1. 乳酸菌は空気中の酸素分圧よりも若干低めの酸素量を好みます。酸素が極端に減ると、乳酸菌の働きが弱り、くさいにおいを放つ産膜酵母が増殖します。ぬかの底まで空気が入り込むように手を突っ込んで、毎日かきまぜてやりましょう。 2. えさとなるぬかが不足しないように、ぬかは適宜補充しましょう。 3. 気温が20度前後になるように冬場は温度変化が少なく比較的暖かい場所に置いてやりましょう。 4. 塩分濃度は10%前後になるように高すぎず、低すぎないように調整してやりましょう。 5. 味噌よりもちょっとぼそぼそくらいの水分量が適当です。水分が多いと空気がなくなり毎日混ぜていても効果がありません。などです。これらの条件を整えてやって、元気な乳酸菌を育てて、うまいぬか漬けをつくりましょう。

【まずいぬか漬け】 失敗したぁと思ったとき、何か気になることはありませんでしたか?
注意事項 1.ぬかは気がむいたときにしか、かき混ぜません。 2. 野菜を加えているので、特段新しいぬかは補充しません。 3. 冬場に仕込んでいるので、気温が連日15度を越えるようなことはありません。 4. 健康のため、塩分濃度は低くしているので、ときおり白い膜がついてツンとくる異臭もします。 5. 野菜から出た水分で、ぬか床は常にべちゃべちゃしています。このどれかひとつでも当てはまったら、あなたのぬか床は「おいしい漬け物ができないよう」と言って苦しんでいるかもしれません。

【ぬか漬けにアルコール臭がする】 ぬか床を作り始めには、アルコール臭がすることがあります。産膜酵母のような、くさい臭いではありませんが、鼻にツンツンとくるアルコールの臭いがするのです。もちろん、そのぬか床に漬け込んだ野菜にも、このアルコールの臭いが、ついてしまうことになり、野菜を噛んだときに鼻からツーンとアルコール臭が抜けることになります。 対処方法としては、ぬか床の野菜を一旦すべて取り出し、10分間ほど、新鮮な空気に触れさせるために、徹底的にぬか床を混ぜ合わせてから、野菜を戻します。アルコール発酵している酵母菌が、アルコール発酵しなくてもすむように、十分な酸素をあたえてやるのがその目的ですから、ぬか床に手を突っ込んだときに、空気が出入りする、ズボッ、ズボッという音がするくらいに、元気良く混ぜ合わせます。 また、ぬか床にとけ込んでいるアルコールを空気中に発散できればいうことなしです。このため、ぬか床の混ぜ方は、「徹底的」にまぜることがポイントになります。 これを3日間~1週間も続ければ、香りの良いぬか床に戻ります。一度やるだけでも、かなり改善しますので、アルコール臭に悩んでいる方には、ぜひおすすめしたいです。 タッパーウェアーなどの密閉容器を使っている場合、このアルコール臭が発生しやすいようです。酸素の供給が絶たれているため、酵母菌が酸素呼吸を止めて、無酸素呼吸のアルコール発酵に切り替わるわけですから当然ですね。密閉容器を使われている場合は、蓋の代用として、空気の出入りができるキッチンペーパー等を使い、密閉しないようにすると良いです。

【ぬか漬けにはビタミンB1が多い】 疲れを回復するための代表的な栄養素として、ビタミンB1、アリシン、クエン酸の3つがあります。まずビタミンB1は、糖質を分解するために必要なビタミンで豚肉やうなぎ、ぬか漬けに多く含まれています。このビタミンB1が不足すると疲れのもとになる乳酸を糖質の分解の過程で生成してしまいます。アリシンはビタミンB1の吸収を助ける働きがあり、ニンンク、ネギ、ニラなどに多く含まれます。最後にクエン酸は、ノーベル賞を受賞したイギリスのクレブス博士が、クエン酸サイクルとして食物から取り込んだ栄養素を円滑に循環させる働きがあると説明しており、梅やかんきつ類、酢に多く含まれています。

【注意】手作り食品のなかでも発酵食品は、器具や器具を扱う手などに雑菌がついていると思わぬ事故を招く場合があります。衛生には十分に気をつけて、楽しい食品づくりを心がけるようにしましょう。また、嫌な臭いがちょっとでもしたら口にするのは止め、廃棄する勇気をもちましょう。何事も自己責任の意識をもって行動してください。

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